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 《カメラって高いのね・・・後編1》

Vol.32 2001/11/07

「師匠。MD−10とF−3って何でこんなに違うんでしょうか?」
「阿部さん、写真の写りってどこで一番差が出るかわかりますか?」
「う〜〜ん・・(考えてる)、それはカメラの・・ボディーでしょうか・・。」
「いえ、ほとんどはレンズで決まります。もちろんF−3と今のカメラではカネも手 間も掛け方が全く違いますからボディーの違いも少なくはありませんけど。」
「レンズ・・・ですか?」
「そう、例えばF−3につけてるレンズとMD−10のレンズ。重さが全然違うでしょ。」
「違います。F−3のレンズは驚くほど重いです。」
「それはレンズがガラスでできているからです。MD−10はプラスティックにコー ティングしたものです。 写真とはけっきょく光を取り込んでフィルムに焼き付ける機械なわけですから光を取 り込む装置、つまりレンズの役割が最も重要なんです。」
「なるほど。」
「どんなに上手く作ってもプラスティックレンズではガラスレンズほどの写りはありえません(キッパリ!)。」
「そんなに違うんですか。」
「違いますね、しかもそれだけじゃないです。f値も全然違うしズームレンズは写りが格段に悪い!」
「f値?」
「f値とはですね・・・(ここからずっとf値の説明が続く。要するに光を取り込む 量が多いと写りも良くなるらしい、続いてズームレンズがダメな理由がずっと続 く)」
「なるほど、良くわかりました(本当はチンプンカンプン、理解できたのは自分でいじるようになったずっと後)。」
でもどうやら『レンズが良いからF−3は綺麗に撮れる、MD−10ではどうやってもムリ』と伝えたいのだけはよくわかった。
決めた!F−3を買おう。
「でも阿部さん、F−3は今年から生産中止になっていますよ。」
まてまてまてまて、何でオレはいっつもこうタイミングが悪いんだよ。 全日空の「関空・デンパ線」が廃線になったのもそう。本当だったら今年はタイムカ プセルキャンペーンで余分にマイルが貯まるはずだったんだよな〜。 ついてないよな、オレ。
でも待てよ、F−3の後継機を売ってるんじゃないのか?
「売ってますよ、ニコンF−5。」
それだ!
「でも高いですよ、36万3千円。」
それ・・・じゃありません、僕の欲しいカメラは。そんなお金はありません。
「カメラ屋さんに行ったらまだF−3が残ってるかもしれませんよ、デッドストック で。」
デッドストック。いい響きじゃないか。 なんか昔リーバイスのビッグEとか赤タブとかのデッドストックが狂ったような値段で取引されてたのを知ってる世代としては、デッドストック=貴重品と脳髄に刷り込まれてる。
『F−3のデッド(ストック)を手に入れる』 もうイメージだけで失神しそうなくらい物欲神経(あるのか?そんなもん)を刺激するぜ。
決めた!帰りにカメラのキタムラでF−3(のデッド)を買って帰ろう 。
「師匠、ありがとうございました。」
「またなにかあったら訊いてください」
そうそうに挨拶をすませてカメラのキタムラに直行だ。

「カメラを買うならカメラのキタムラ、車で買い物ら〜くらく」
呑気な音楽が流れる店内を目を血走らせながら横切って目当てのコーナーに直行。
大柄な男がショーウィンドウにへばりついてカメラを探す様は警察官がいたら職務質問したくなるほど怪しかっただろうがそんなことを考える余裕はない。
ない、ない、F−3がない、端から端までくまなく見てもない。
そんなとき後ろから呼び止める声が。職務質問の警察官か?
「カメラ決まりましたか?」
振り向くとバリに行く前に来た時にお話をした店員さんだ。
「ニコンUとキャノンEOSSKISSV、どっちもいいカメラですよ。」
なるほど前はそんなカメラを選ぼうとしてたんだな。でも今のオレにはどっちのカメ ラも全然興味がない。
「実はいろいろあってF−3を探してるんですよ。」
店員さんはちょっと意外そうな表情をした後
「ほ〜〜F−3ですか(ニヤリ)」 と意味深なお答え。
「お客さん、素人じゃないね。」とか言われそうな怪しい雰囲気だ、実際は全くの素 人だけど。
「ちょっと待っててください。ふふふふ・・」 言い残して店員さんは奥に引っ込んでしまった。
怪しい。なんだか店員さん裏の顔だ。 まるでゴルゴ13の、普段は金物屋だけど実はライフルのプロフェッショナルのじいさんみたいだ。 奥からでてきたらM−16改造アーマライト持ってるんじゃないだろうな。
しばらく待ってると店員さんが出てきた。その手には・・・・・続く

(以下次号)

(もと店長 ケンゾウ)

 

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